抗うつ薬の減薬方法と医師との連携の重要性
抗うつ薬の減薬は「焦らず、段階的に」「医師と緊密に連携して」進めることが最も重要です。
- 減薬の開始前に、少なくとも6ヵ月以上症状が安定していて、主治医が減薬に同意していることが基本条件です。
- 半錠や1/4錠単位で、ごく少しずつ量を減らしていきます。標準的には2~4週間ごとに最小単位ずつ減量します。例:40mg→30mg→20mg→10mg→5mg→中止、と段階を踏みます。
- 半減期の短い薬は離脱症状が出やすく、より慎重なスケジューリングが必要です。
- 処方や進め方、途中で出た症状や疑問は必ず医師や専門家に相談し、自分で調整しないことが再発・重篤な離脱症状の予防につながります。
また、必要に応じて心理師などとも連携しながら総合的なサポートを活用すると、不安や再発リスク軽減に有効です。
抗うつ薬減薬時に注意すべき離脱症状の種類
減薬や中止の際に現れる離脱症状は多種多様です。「めまい」「吐き気」「頭痛」「しびれ」「インフルエンザ様症状」「電気が走るような異常感覚(シャンビリ感)」「不眠」「悪夢」「イライラ」「不安感」などが代表的です。
- 身体の症状:めまい、ふらつき、吐き気、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、発汗、手足のしびれ、耳鳴り
- 神経・精神症状:不眠、悪夢、イライラ、不安感、集中力や思考力の低下、感情コントロール困難
- 感覚異常:電気が走るようなピリピリ・チクチク感(シャンビリ感)、音や光の過敏
これらは特に投薬期間が長い場合ほど現れやすい傾向があります。離脱症状が出た場合は、いったん減薬をストップし、もとの量に戻して経過を見る、という柔軟な対応も重要です。
離脱症状が起きやすい抗うつ薬の種類と特徴
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):特にパロキセチン(パキシル)は作用時間が短く、シャンビリ感や不安、眠気、めまいなど、強い離脱症状が現れやすい。ほかにルボックス、レクサプロなどでも注意。
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬):ベンラファキシン(イフェクサー)、デュロキセチン(サインバルタ)など、SSRI同様に離脱症状が出やすい。
- 三環系抗うつ薬/四環系抗うつ薬:SSRI/SNRIよりは少なめですが、抗コリン作用や精神症状悪化などに注意。
- NaSSA・S-RIM(ミルタザピン、ボルチオキセチン)他:やや離脱症状のリスクは低めですが、個人差があるため注意が必要。
特に、半減期(血中から薬が排出されるまでの時間)が短い薬ほど離脱症状が強く出やすいことがポイントです。
抗うつ薬の減薬は「ゆっくり・計画的」「医師とともに」が原則。離脱症状のリスクが高い薬では、より慎重なステップダウンが必要です。症状に気づいたら慌てず医療者に相談し、安全に治療を終えるよう心がけましょう。
SSRIsとSNRIsそれぞれの離脱症状比較一覧
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、いずれも離脱症状が比較的強く出る薬剤群であり、症状の内容や強さに特徴があります。
SSRIの主な離脱症状
- めまい・ふらつき
- シャンビリ感(電気が走る感覚、特にパロキセチンで目立つ)
- 吐き気
- 頭痛
- 不安感・焦燥感
- 不眠・悪夢
- 手足のしびれ、耳鳴り
- イライラ、気分の変調
- 感覚異常(ピリピリする、ブレインザップ[brain zaps]など)
SNRIの主な離脱症状
- めまい・ふらつき
- 吐き気・消化器症状(特にベンラファキシンで多い)
- しびれ感・感覚異常
- 頭痛
- 不安、不眠
- 動悸・頻脈(ノルアドレナリン増加の影響)
- 発汗、インフルエンザ様症状(筋肉痛、だるさ)
- イライラ、集中力・思考力の低下
比較表
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)とSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、いずれも離脱症状が比較的強く出る薬剤群であり、症状の内容や強さに特徴があります。
比較表
SSRI | SNRI | |
---|---|---|
めまい・ふらつき | 多い | 多い |
吐き気・嘔吐 | 多い | 多い。特にベンラファキシン |
しびれ・感覚異常 | 多い(シャンビリ感) | あり |
不眠・悪夢 | 比較的多い | 多い |
不安・イライラ等 | 多い | 多い |
動悸・頻脈 | 少ない | 出ることあり(ノルアドレナリンの作用) |
発汗・筋肉痛等 | 少ない | あり(インフルエンザ様症状) |
強い特徴 | シャンビリ感(特にパロキセチン) | ベンラファキシンに多い |
SSRI、SNRIともに離脱症状は急な中止や減量で起こりやすく、特に半減期が短い薬剤(パロキセチン、ベンラファキシンなど)は強く出やすいのが特徴です。減薬は必ず医師の指導下で、ゆっくり進めてください。